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研究内容の紹介
【世界初!!】非酸化物Ceramics/金属間化合物/金属材料
からなる積層材料の熱間衝撃圧接
(公益財団法人 天田財団、公益財団法人 岩谷直治記念財団、公益財団法人 火薬工業技術奨励会からの研究助成を受けて行われました。)
セラミックスと金属は化学結合様式が異なり、特性もかなり違うことから、以前はそれぞれを別々の用途に用いることしか考えられていませんでした。しかし、近年、材料の複合化という考え方が急速に発達し、両者の特性を共存させてより高機能化した材料として使用していこうとする思考が高まってきました。しかし、脆いセラミックスを金属と複合化すること、ましてや爆薬の力で接合することは、実験する前から失敗することは火を見るよりも明らかでした。
当研究室では、上記のような発想を覆し、燃焼合成により脆くて固い化合物を高温下で合成し、その熱が維持された状態で爆薬による衝撃波で金属と接合する方法を考案し、実際に積層した複合材料を作製することに成功しました。
とは言え、セラミックスと金属とでは、高温下での特性、特に熱膨張係数が異なります。この差を埋めるために両者の間に超弾性効果を有するTiNi金属間化合物の層を導入します。TiNiの結晶は外部から力が掛かるとそれに総じて結晶の形を変化させる、特異な現象(応力誘起変態と言います)を示すことが知られています。よって、高温下で両材料の熱膨張によるひずみが生じてもTiNiがそれを緩和してくれるわけです。(上図参照。)
上の写真は、その方法で作製した「ホウ化チタンTiB2/TiNi/鋼」の三層からなる複合材料の光学顕微鏡写真です。TiB2セラミックスの表面には数百℃で爆発衝撃加工した際にできた"しわ"が見られますが、その高温下で加工したおかげで3層が密着している様子が良く分かります。
このサンプルを小さく切り出し、500℃に保った炉の中で数分間保持し、その後直ちに水中へ投下する実験を行ったところ、50回程度まで剥離が起こらないことを明らかにしました。
木質系廃棄物を用いた炭化物セラミックスの合成
(科学研究費補助金採択課題:木質系廃棄物を利用した低環境負荷型
炭化物セラミックス合成法の開発)
研究種目:萌芽的研究、 研究期間 (年度)2000
研究代表者:友重 竜一
連携研究者:坂井克己 教授(九州大学)
原料の杉の外樹皮(左)と内樹皮(右)
合成用の容器と反応温度の
測定方法の模式図
木質系廃棄物から合成された炭化物セラミックスの
走査型電子顕微鏡写真
研究概要
《目的および方法》樹木の樹皮は、現在まで有効なリサイクル法がなく、焼却処分により炭酸ガスを発生させていた。このような木質系廃棄物中に含まれる炭素成分を有効な工業生産用の原料とみなし、炭酸ガスとして放出させることなく、セラミックスの構成成分として固定化することを試みた。手法として、セラミックス等の大量生産が可能な燃焼合成(SHS)法を用い、木質系廃棄物と金属チタン粉末の混合物から工業的に有用な炭化チタン(TiC)セラミックスを直接的に合成した。さらに、木質系廃棄物中に含まれる各元素(炭素、水素、酸素)がSHS反応に及ぼす影響についても調査した。
《結果》(1)各種木質系廃棄物の組成分析:外樹皮および内樹皮に含まれる各元素の割合は、各々約52%C、5%H、43%Oおよび46%C、6%H、48%O(質量比)であった。これは、市販のリグニン(55%C、4%H、41%O)とセルロース(43%C、6%H、51%O)のほぼ中間組成であった。
(2)チタンと各種木質系廃棄物等の混合物によるSHS反応:上記の結果を基に、目的組成をTiC_<1.0>としたものを作製し、その時の燃焼波速度(反応速度)を測定した。その結果、リグニン、外樹皮、内樹皮、セルロースの順に秒速6mmから1mmへと反応速度が低下した。これは各木質系物質に含まれる炭素量の変化と相関があった。
(3)生成相の同定並びに組織観察:反応生成物は、X線回折の結果より、TiCのみが検出された。しかし、その回折ピークは、化学量論組成に近いTiCのものと比べて高角側にシフトしており、TiC結晶内に格子欠陥(空格子点等)が導入されていることが示唆された。また、走査型電子顕微鏡観察により、TiCの結晶粒径は1〜5μmであった。
(4)反応機構に関する考察:反応系においてチタンと、木質系物質に含まれる炭素量の比を等モルに設定して合成を試みたが、反応中にその炭素が同じ木質系物質に含まれる酸素と反応し炭酸ガスを形成した。結果的にTiC結晶中の炭素欠損、すなわち炭素の空格子点を形成したと考えられる。
また,以下のように、上記と同じ手法で廃紙を原料として炭化物セラミックスを合成することが可能である。
(※ 九州大学農学部 坂井克己教授、芦谷竜矢博士(現・山形大学教授)との共同研究)
廃紙とチタン粉末から合成された炭化チタンの生成を示すX線回折結果
廃紙とチタン粉末から合成された
炭化チタンの走査型電子顕微鏡写真
非酸化物Ceramicsの合成と特性評価
(科学研究費補助金採択課題:爆発衝撃固化と燃焼合成による窒化チタン分散
ホウ化チタン高強度高耐食性複合材の開発)
研究種目: 奨励研究(A)、研究期間(年度):1996年
研究代表者:友重 竜一
1目的 本研究では自己伝播高温合成(SHS)法と衝撃波による超高圧力を組み合わせた方法を用いて、窒化チタン(TiN: 融点 2930℃)の高耐食性と、ホウ化チタン(TiB 融点 3230℃ )の耐熱・高強度という異なる特長を兼ね備えた複合材料の作製を試み、その材料への諸性質を調べた。
2方法 原料にチタン(Ti,粒径44μm)、ホウ素(B,同1〜2μm)及び窒化ホウ素(BN,同1〜16μm)の粉末を用い、合成後に組成がTiB -0〜60mol%TiNになるように秤量し、8時間の湿式混合を行った。乾燥後、衝撃圧縮装置内に充填し、SHS反応を開始した。発熱反応を伴って生成した多孔質なTiN/TiB 複合体を、爆薬の爆発による超高圧力(約5GPa)で固化した。得られた複合材料に対する試験結果を以下に記す。
3結果 (1)X線回折の結果、TiNとTiB の2相のみが検出され、BN含有量が多いものほどTiNの生成量は増加した。
(2)衝撃圧縮体の密度は組成に拘わらず、約4.4〜4.2Mg/m を値を示した(最高相対密度は約95%であった)。
(3)圧縮体の硬度はTiNの含有量が増すと共に低くなり、TiB 単体で約32GPa、また、TiB -60mol%TiNでは約18GPaであった。これは、後述の微細結晶粒の増加に起因すると思われる。
(4)SEM観察の結果、複合材料を構成する結晶粒の大きさがTiN相の増大に伴い次第に微細になることから、TiN粒はTiB 相の粒成長を抑制していることが示唆された。また、その時に観察された最小のTiN結晶粒径は約300nmであった。
(5)複合材料について塩酸及び硝酸に対する腐食試験を行った結果、高TiN含有量のものほど高耐食性であり、SHS法で生成した多孔質体に比べ、衝撃固化体の腐食の進行はそれの約13%に留めることができた。また、硝酸より塩酸に対する腐食抵抗が高かった。
(6) 上図のように立方晶TiN相と六方晶TiB 相間には、前者の{111}面と後者の{0001}面において整合性があり、それぞれの<110>と<1120>間に原子(イオン)の配列方向が平行であるという、すなわち「Blackburnの方位関係」があることを見いだした。
(※ 物質・材料研究機構 井誠一郎博士との共同研究)
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熱間衝撃圧縮または燃焼合成で得られたMAX 相の材料特性
a) 熱間衝撃圧縮で得られたMAX 相の材料特性
1 目的 本研究では自己伝播高温合成(SHS)法と衝撃波による超高圧力を組み合わせた方法を用いて、MAX相材料の高密度固化を行い、その材料への諸性質を調べた。
2 方法 原料にチタン、アルミニウム及び炭素の各粉末を用い、合成後に組成がTi2AlCを含むTiCセラミックスまたはTiAl金属間化合物との複合材料にになるように以下の比率で秤量し、湿式混合を行った。
Ti + xAl+ (1-x )C → xTiAl + (1- x)TiC, ここで x = 0 ~ 1.0。
乾燥後、衝撃圧縮装置内に充填し、SHS反応を開始した。発熱反応を伴って生成した複合材を、爆薬の爆発による超高圧力で固化した。
3 結果 Ti4Al2C2系MAX相を含む様々な複合材料を熱間衝撃圧縮法で作製し、微細組織および各種特性を調べた。
a 本実験で最も高い相対密度は95%であった。
b 硬度値は、 TiC から中間組成まではなめらかに変化、TiAl-rich側組成で概ねTiAlと同じ硬さを示した。
c Ti4Al2C2は層状組織を、またTiAl と TiCは、それぞれ微細等軸粒および 粗大な結晶粒を呈した(下左図)。
d 熱膨張係数は、TiAL から中間組成までなめらかに変化することがわかった(下右図)。
以上のように加工性や変形能に優れた本系材料は多用途な工業用材料として有用であると考えられる。
(※ 現・YAMAKIN(株) 田中秀和博士との共同研究。)
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上記の研究は、以下の科学研究費補助金によるサポートを受けて研究結果を引き継いできたものです。
(科学研究費補助金採択課題:自己伝播高温合成と爆発衝撃固化の
複合プロセスによる高密度炭化チタンの作製)
研究種目:奨励研究(A)、研究期間 (年度):1994
研究代表者:友重 竜一
研究概要
1.《序論》チタン粉末と活性炭素粉末を用いて、自己伝播燃焼合成終了後の高熱を利用して、熱間で衝撃圧縮を行う複合プロセスによる高密度炭化チタンの作製を試みた。混合粉末は炭素(C)とチタン(Ti)の粉末を原子比率(C/Ti)で0.6〜1.0まで変化させたものを用いた。
2.《最適衝撃固化条件の決定》C/Ti=1.0の混合粉末を用いてSHS反応開始からの経過時間を変化させ最適条件を求めた。その結果、反応開始から50秒後に最高密度を示したので、これを最適条件であると決定した。
3.《衝撃圧縮材の各種性質》
(1)密度測定結果 C/Ti比を0.6から1.0に変化させると密度値は上昇し、C/Ti=1.0で4.72g/cm の値を示し、これは相対密度約96%に相当した。
(2)走査電子顕微鏡(SEM)観察 各C/Ti比の試料に対して破面形態はほとんど変化せず、粒界破壊とへき開破壊が混在したものであった。また、この破壊形態は市販のTiC材と類似していた。
(3)透過電子顕微鏡(TEM)観察 C/Ti=0.6,0.8,1.0の試料について観察したところ、各試料とも1μmからサブミクロンオーダーの結晶粒で構成されており、その粒界は強固に結合し、粒内には衝撃波の通過の際に導入されたと思われる大量の転位が観察された。また、電子回折パターンからはC/Ti比が1.0から0.6へ低くなるにつれて、超格子規則反射が明瞭に観察され、さらに短範囲規則構造に起因するスポットの散漫散乱も見られた。
(4)硬度試験結果 C/Ti比が0.6〜0.9までは大きな変化は見られなかったが、C/Ti=0.9から1.0にかけて急激に上昇し、C/Ti=1.0で最高値32GPaを示した。この値は市販材(31.2GPa)に匹敵しており、SEM観察の結果と共に本実験で作製した試料が市販材の性質に匹敵する良好な試料であることが分かった。
(科学研究費補助金採択課題:爆発衝撃固化と燃焼合成による
炭化チタン/アルミナ高強度・導電性セラミックスの作製)
研究代表者 友重 竜一
1.目的 TiO2+Al+グラファイト(G)[A方式:TiC-10〜40mol%Al2O3]またはTi+(G)+Al2O3 [B方式:TiC-10〜15mol%Al2O3]混合粉末を用いて高熱を伴う自己伝播高温合成(SHS)を行い、多孔質TiC/Al2O3複合体を得る。この反応直後の高温と爆薬の爆発に伴う超高圧を利用して熱間固化し、高密度・電導性TiC/Al2O3セラミックス複合材を作製し、その性質を評価することを目的とする。
2.燃焼合成の速度 両方式ともAl2O3量の増大に伴い燃焼波の速度は低下した(例えばA方式において、10%で約14.5mm/s、40%で約3.0mm/s)。これは前者ではAl溶融時の吸熱反応、また、後者ではAl2O3によるTi+(G)の反応の抑制によるものと思われる。
3.最適衝撃圧縮条件 直系51mm、高さ25mmのSEP爆薬を用いSHS反応開始から20〜80秒後に衝撃圧縮を行ったところ、60秒で最高の密度値を示す試料を得た。これより、最適条件を反応開始から60秒後とした。
4.複合材の性質 得られた複合材のX線回折を行った結果、TiCとAl2O3の両相以外は検出されなかった。複合材の密度及び硬度値はAl2O3量の増大と共に低下した。これはAl2O3生成量の増大に伴って反応熱が低下して衝撃圧縮時の塑性変形が困難となり、結合力が低下したことに起因すると思われる。この傾向はB方式でも同様であった。破面のSEM観察の結果、約1μmの結晶粒径を持つ両相間が衝撃波の超高圧力により強固に結合していることが確認された。さらに、電気抵抗(比抵抗)はAl2O3量が増えると上昇するものの、Al2O3を最も含有したTiC-40mol%Al2O3において2.5x10 Ωcmの低い値を示したことから、本系材料は放電加工が容易に行い得るセラミック材料であることが期待される。
(科学研究費補助金採択課題: 爆発衝撃固化と燃焼合成による
窒化チタン分散ホウ化チタン高強度高耐食性複合材の開発)
研究代表者 友重 竜一
1 目的 本研究では自己伝播高温合成(SHS)法と衝撃波による超高圧力を組み合わせた方法を用いて、窒化チタン(TiN)の高耐食性と、ホウ化チタン(TiB2)の耐熱・高強度という異なる特長を兼ね備えた複合材料の作製を試み、その材料への諸性質を調べた。
2 方法 原料にチタン(Ti,粒径44μm)、ホウ素(B,同1〜2μm)及び窒化ホウ素(BN,同1〜16μm)の粉末を用い、合成後に組成がTiB2-0〜60mol%TiNになるように秤量し、8時間の湿式混合を行った。乾燥後、衝撃圧縮装置内に充填し、SHS反応を開始した。発熱反応を伴って生成した多孔質なTiN/TiB2複合体を、爆薬の爆発による超高圧力(約5GPa)で固化した。得られた複合材料に対する試験結果を以下に記す。
3 結果
(1) X線回折の結果、TiNとTiB2の2相のみが検出され、BN含有量が多いものほどTiNの生成量は増加した。
(2) 衝撃圧縮体の密度は組成に拘わらず、約4.4〜4.2Mg/m を値を示した(最高相対密度は約95%であった)。
(3) 圧縮体の硬度はTiNの含有量が増すと共に低くなり、TiB2単体で約32GPa、また、TiB2-60mol%TiNでは約18GPaであった。これは、後述の微細結晶粒の増加に起因すると思われる。
(4) SEM観察の結果、複合材料を構成する結晶粒の大きさがTiN相の増大に伴い次第に微細になることから、TiN粒はTiB2相の粒成長を抑制していることが示唆された。また、その時に観察された最小のTiN結晶粒径は約300nmであった。
(5) 複合材料について塩酸及び硝酸に対する腐食試験を行った結果、高TiN含有量のものほど高耐食性であり、SHS法で生成した多孔質体に比べ、衝撃固化体の腐食の進行はそれの約13%に留めることができた。また、硝酸より塩酸に対する腐食抵抗が高かった。
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b) 燃焼合成で得られたMAX 相の材料特性
(科学研究費補助金採択課題:金属加工性と固体潤滑性を向上させる遷移金属炭硫化物の低コスト・大量合成法の開発)
研究種目:基盤研究(C)、 研究期間 (年度)2008 – 2010
研究代表者:友重 竜一
連携研究者:石田 清仁 名誉教授(東北大学), 及川 勝成 教授( 東北大学)
燃焼合成法を利用してCr硫化物、Ti系およびZr系炭硫化物を安定的に得た。透過電子顕微鏡観察結果から代表的な固体潤滑剤のMoS2と同様な層状構造を確認した。高温酸化試験の結果、約500℃以上での酸化が激しいことから、被削性向上用分散剤として溶鋼中への当該化合物を投入・分散させる方法は酸化雰囲気では困難と考える。一方、動摩擦係数μは概ね0.11-0.12を示し、MoS2と同程度であった。以上より固体潤滑剤としては十分期待できる物質であると結論づけた。
詳細な報告は、こちら。→
一部、工事中
燃焼合成で得られたTi2SC MAX相材料の電子顕微鏡写真
磁性材料
(科学研究費補助金採択課題:爆発衝撃圧縮と燃焼合成による
Sm-Nd-Fe-B-N系強磁性複合材料の開発)
研究種目:奨励研究(A) 、研究期間 (年度):1997 – 1998
研究代表者: 友重竜一
1.目的 本研究では燃焼合成(SHS)反応の急加熱・急冷の性質を利用することでSm2Fe17Nx非磁性化合物等に分解することを抑制できると考え、水中衝撃圧縮法とSHSを組み合わせた方法を用いてSm2Fe17Nx単体のバルク材を作製し、さらに下記の反応(1)で生成したSm-Fe-N系とNd-Fe-B系を母相とする緻密な磁性複合材料の作製を試み、その磁気特性の評価を目的とする。
2.今期の結果 当初の計画ではSm-Fe-N系とNd-Fe-B系の化合物を単体で得ることが困難であったため、出発原料を反応活性な金属SmとNd、そしてFeに変更し、次式による合成を試みた。
(2Sm+17Fe)+(2Nd+14Fe+B)→<N2>Sm2Fe17Nx+Nd2Fe14B -(1)
反応における窒素源は空気中に求めた。結果として、(1)式左辺の前者でSm2Fe17Nx、Sm-Fe系合金とFeが、また、後者ではNd2Fe14、NdN、Feが検出された。そこで左辺前者について、組成比をSmFe-2:6〜2:17まで変化させ、SHSによる合成を行ったところ、Sm:Fe=2:7においてFeの残留が少ない試料が得られた。また、熱間および冷間衝撃圧縮材を作製し、磁気特性を調べたところ、冷間圧縮材が他者に比べ、保磁力が向上することを確認した。これは、冷間強加工で導入された格子欠陥の存在に起因すると推察された。熱間圧縮およびSHS材についてはFe相が単独で残存していたため特性を向上させられなかった。Nd-Fe-Bに関してもNd2Fe14B 相以外の残留物が磁気特性の向上を阻害しており、Sm-Fe-N系材料と同様、実用化に相当する磁気特性を得るまでには至らなかった。しかしながら、合成条件を再度検討することにより特性はさらに改善できると考えられる。
ラネーニッケルの合成
(科学研究費補助金採択課題:収束水中衝撃波を利用した
特異な金属間化合物の合成と環汚染物質触媒への応用)
研究種目:萌芽研究 、研究期間 (年度):2006 – 2007
研究代表者 吉田 烈(崇城大学)
これまで環境汚染物質を分解する触媒反応には、光触媒機能を有するセラミック材料等が用いられ、その効率は材料の種類に依存していた。昨今の様々な環境汚染物質の発生状況に対しては、新しい触媒材料の開発が不可欠である。そこで、触媒機能を活性化させるため、「自己伝播高温合成法(SHS法)」と爆薬による「衝撃超高圧」を原料の金属素粉末に作用させることで、新たなラネーニッケル合金の開発を目的とした。まず、NiとAlの両粉末を原料とし、Ni:Al=1:1、2:3、1:3(at比)の割合で秤量、湿式混合、乾燥したものを円柱状にプレス成形し、SHS法により多孔体を得た。また、これに続けて約5GPaの衝撃超高圧負荷実験(可塑性爆薬量:20〜40g)を組み合わせて高密度試料も得た。粉末X線回折実験の結果、生成相は超高圧負荷の有無に拘わらず、各系に妙してNiAl,Ni2Al3そして副生成物Ni2Al3を伴ったNiAl3が検出された。これらを70℃のNaOH熱水溶液に約10〜20時間浸漬し、Alを溶出後ラネーニッケルとし、125〜250μmおよび125μm以下の2種類に分級した。これを水に懸濁させものをサンプル叛に1 ml分取後、41.2ppmの2,4,6-トリクロロフェノール(TCP)水溶液を50ml添加し攪絆続けながら、2、4、6、24、48時間後に水相を2mlづつ試験管に分取し、10分間、3000rpmの条件で遠心分離を行った。得られた上澄みを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定し、残留2,4,6-TCPの量を測定した。この結果、全試料において、粒径に拘わらず4時間までは2,4,6-TCPの濃度が急激に低下したが、それ以降48時聞までは微減であった。これは触媒内の水素が速やかに消費され、活性の低下が起きたためと考えられる。一方、衝撃負荷条件に依存し、40gの最大爆薬量で、また合成反応から起爆までの時間(1または3分後)が長いほど高活性を示した。以上のことから、より低い温度、かつ強く衝撃負荷をかけたものほど活性が向上することを明らかにした。これは衝撃負荷に伴う結晶格子へのひずみの導入と強い因果関係を示唆していた。
一部、工事中
生体適合性Ceramics
(科学研究費補助金採択課題:幹細胞のがん化(形質転換)を
阻止する新規培養プロセスの構築)
研究種目:基盤研究(C)、研究期間 (年度)2007 – 2009
研究代表者:松下 琢、研究分担者:上岡龍一、友重竜一
本研究では、肝幹細胞の安全な再生医療への応用を目標に、初めに形質転換(がん化)した肝幹細胞を識別するための3つの評価法を確立した。次にこの評価法を用いて、肝幹細胞の大量培養に最適な培養担体について検討し、ハイドロキシアパタイト多孔質担体が適当であり、この担体の孔のサイズや凹凸が、細胞のがん化の抑制や肝機能発現に重要であることを見出した。さらに、培養した肝幹細胞の中から、独自に開発したハイブリッドリポソームを用いて、がん化した肝幹細胞を選択的に除去する培養法の開発に成功した。
詳細な報告は、こちら。→
各種HAp担体上で播種した細胞の増殖の様子を捉えた電子顕微鏡写真
以下、工事中
LDHの構造を利用した高度触媒機能材料